2013年8月30日金曜日

ブログ書評第14回『経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語』

みなさん、こんにちは。今年の夏も一度も自室のクーラーをつけなかったことを誇りに思うひろおかです。

今回、自分が紹介する本は東谷暁(ひがしたに さとし)さんの「経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語」という本です。

自分が経済学部で過ごしてきて大体経済学部のカリキュラムは2つに大別できるような気がします。

1つ目が、需要と供給が交わるところで価格が決まる・・・とか、政府が公共投資を行うとGDPはこんだけ上がる・・・のようにモデルを使って経済の成り立ち、理論を考えるミクロ、マクロ経済学のような理論経済学(呼び方はこれであっているか分かりませんが・・・)ともう一つが、実際、今の経済がどのような歴史をたどってきたのかを考えて分析する経済原論というものの2つです。本当はもっと細かくいろいろな分野もあるし、統計とか会計とかも大事ですし、さらに、それぞれの分野が密接に関わっているのですが、まぁ置いておいて、この本では副題にもある通りケインズの時代からはじまって経済の理論をつくっていった方々の歴史をたどります。つまり、理論ができるまでの歴史、経済学者の半生をつづっているという珍しい本です。
ただし、この本を読むとケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」が理解できるとかそういうことは決してございません。むしろ、理論には数式も一切使わず、割りとあっさりとした説明のみにとどめてあり、この経済学者はどういう時代に生まれ、どういう環境や考えのもとでこの理論が生まれたのかについて書かれています。

理論やモデル、数式と聞くと一切の主観が排除されているように思えますが、経済学のそれは絶対に違います。社会の影響なんかをかなり色濃く受けています。

ケインズはシャンパンがめちゃくちゃ好きだったというエピソードを知ってもアベノミクスの今後がどうなるとかには全く理解の役には立ちませんが、前述のとおりそういう学問なので(理論+歴史)で知っておくと一歩踏み込んで考えられるような気がします。

本の中身は大半が生い立ちや時代背景と理論、功績について述べられています。残りが著者の現代経済学者への熱い批判(エール)です。これがなければもっと読みやすかったかもしれません。

経済学にあかるい人も、自分のようにそうじゃない人も現代経済学の巨人たちに親しみを感じられるおもしろい本であります。

みなさんもぜひご一読ください。
                                             ビブリオ信州 ひろおか  


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